音と風の生活(ネットで楽しむバイオリン)

久しぶりにバイオリン始めました。ネットで買ったり、いじったり楽しくやっていきます。

久しぶりのライブ サントリーホール ARKクラシックス

このところライブはずっとオンラインだったんですが、ほとんど一年ぶりくらいにコンサートに行ってまいりました。

 

サントリーホール ARKクラシックスという、三浦文彰さんと、辻井伸行さんがアーチスティックリーダーとして企画と演奏を引っ張るという素晴らしい演目でした。

 

昼の部はクロイツェルとハンマークラヴィアという、ベートーヴェン好きにはたまらない重量級なソナタ、夜はヴァイオリンコンチェルト3番とピアノコンチェルト21番というこれもモーツァルトのベストともいえる選曲で、私は、勢い余って昼、夜通しでサントリーホールで聴かせていただきました。

 

まー、本当にコンサートを堪能した一日となりました。

 

まず、三浦文彰さんは本当に達者な演奏だなーと感心しました。どんな難しいところもさらりと弾きこなししてしまう様は、まさにバイオリン王子で、そのスムースかつ華麗な弾きぶりは女性陣を虜にしますね。

 

午後のクロイツェルでは伴奏の江口玲さんとの息もぴったりで、難局を最後まで完璧に軽く弾ききってしまったのは本当に感嘆でした。

 

さらにすごかったのが夜の3番のコンチェルトの一楽章のカデンツァで、確かシェリングとかが録音に入れているサムフランコの難しい方のものを弾かれたと思うのですが、後半のアルペジオとか本当に流れるようで、残響音の良いサントリーホールで聴けてよかったです。

 

また、三浦さんは夜の部は前半弾き振り、後半は指揮と本当に八面六臂のご活躍でした。そして指揮をされていた時のフォアシュピーラーは三浦さんのお父様。まーすごいメンツです。

 

このオケ本当にうまい。管楽器の色彩感あふれる音色と、小編成ながら一糸乱れぬ大音量の弦セッションのコンビネーションは、海外一流オケに負けないですね。この日は3本入っていたコントラバスの一糸乱れぬ下からの突き上げ感が印象的でした。

 

一方、辻井伸行さんの演奏は本当にスケールの大きなもので、若くして鬼才の域に入られていると思いました。ハンマークラヴィアも21番もそうだったんですが、右手の高音の強くて角がしっかりしたタッチと、流れるような左手のスケール音階の組み合わせが際立っていて、その対比で音楽が引き立ちます。またハンマークラヴィアももう一曲本割で引かれたキラキラ星も冒頭から完全な全開、スピード違反な演奏。本当にすごかったです。

 

また、作曲家でもある辻井さんはカデンツァもオリジナルをやられていたみたいで、コンマス(確か山形交響楽団のソロ・コンサートマスターの高橋さん)が聞きながら笑っておられたのが印象的でした。もしかしたらアドリブ。

 

 

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素晴らしいライブでした

アンコールはトルコ行進曲だったんですが、世界記録に挑戦というすさまじい演奏で、破綻一歩手前のスピードで本当に峠道を全開で駆け降りるような目の覚める演奏でした。

 

正直このアンコールだけでもお金払っちゃいそうでした。

 

演奏が終わったあとのブラボーコールは自粛だったんですが、拍手が鳴りやまず本当に幸せな演奏会でした。

 

スタッフの方も大変だった思いますが、1000人規模のコンサートが開催できるようになったのは大きな前進だと思います。年内またいくつかのライブに行きたいですね。

 

この日の歴史的名演、もう少ししたらオンライン配信されると思うのですが、今から楽しみです。もしよかったら皆さんも追体験されることお勧めします。本当によかったです。

 

できたら夜の部だけでも円盤にしてもらえないかなー。絶対に買います。

ちょうど1年

去年、このブログ始めてからちょうど1年経ちました。

 

思えば、30年ほど全く


やってなかったバイオリンを再度手に取ってから、よく頑張ってるもんだと思います。

 

何回か書いてますが、私は高校デビューのバイオリニストではっきり行って基礎も何もあったもんじゃありません。でも今なんとかバイオリン弾いていられるのは本当に先生のおかげです。

 

バイオリンのテクニックの教授法って本当に日進月歩だと思います。私は今、カールフレッシュにどっぷりハマってますが、昔はフリマリー死ぬほどやってました。教本ってしっかり作られていて、それぞれのコンセプトで教えられるとしっかり伸びると思います。

 

私は前の先生にフリマリーで横の動きを鍛えられ、メンコンもできるようになり、そして今の先生には縦の動きをカールフレッシュで叩き込まれています。

 

やっぱり基本は音程なんだと思いますが、音程をどこまでオートマチックに取れるのかは本当に日進月歩だと思います。公文みたいです。

 

昔バイオリンのプロは、日本の人は音程はあってるんだけれども演奏がつまらない、海外の駆け出しの人はめちゃっくちゃな音程なんだけど迫力がすごいでした。

 

でも今ってそんなこと全くないですよね。

 

誰でもプロの人は音程があっていて、それで芸術性を競う世界かと思います。

 

そんな中で、色々な人の演奏聴きたいですし、また自分も上手くなりたいと思っています。≈

 

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この楽器がスタート地点



バイオリンケースいろいろ

バイオリンケースって結構大事。

 

所有感に影響を与えます。私がバイオリンを始めた数十年前は、でっかい四角のケースがエラかった時期でした。その影響か私も現在壱号器は四角いオブロングと呼ばれるタイプのものを使っています。

 

でも最近は小型のカーボンファイバー製がお洒落みたい。アンサンブルに教えに来る先生もだいたいこのタイプ。本当にコンパクトで軽そうです。またカーボンファイバーって丈夫そうに思えます。F1とかで車クラッシュしてもボデー壊れないですもんね。カーボンファイバー安いものだと1万円くらいからあります。

 

これより安いものはカーボンっぽい塗装をしたプラの可能性があるから要注意です。もちろんグラスファイバーなどでも十分強度はあると思いますが、その分重くはなります。

 

楽器ケースに大事なのはまずは強度であることは間違いないと思います。でもそれだけでもなさそうです。

 

よく言われるのは、楽器ケースそのものが湿度などから楽器を守る役割を果たせるかということ。

 

ほぼ100%木でできているバイオリンは当然ながら湿度に対して敏感です。楽器の鳴りは木材に残留する湿度に影響を受けるのでできれば、湿度は低いに越したことはありません。

 

木材に含まれる水分とバイオリンの性能関係についてはこちらをお読みください。

オールドの音って? 試奏の旅 第2弾 1700年代のバイオリン弾いてみた - 音と風の生活(ネットで楽しむバイオリン)

 

でもあまりに湿度が低いと今度は表板が割れたりする可能性も出てきます。

 

そう考えると極端に湿度の高い夏と乾燥する冬を繰り返す日本の気候って楽器にとっては最悪ですね。高級楽器を音楽家に貸し出している財団などでは、アジア地域への演奏旅行を禁じているところもあると聞きます。また海外から日本に入国した演奏家の名演を支えているのは、そうした環境でもしっかり音を出せるようにメインテナンス出来る腕のある職人さん達のおかげでもあります。

 

どうしても湿度の高い日本で楽器を鳴らすには、楽器にかかるテンションなどが強いセッティングが必要なようで、魂柱な駒などを上手く調整されているようです。こうしたところにも匠の技ってあるんですね。

 

楽器ケースに話を戻すと、木のケースは湿度の変化をバイオリンに代わって受けてとめてくれる点は見逃せません。

 

空気中の水分は、木材の量に対して同じだけ吸い取られていきますから、大体400グラムのバイオリンに対して2KG程度のケースに使われている木材は5倍程度の水分をバイオリンの代わりに吸い取ってくれます。

 

この効果は結構大きいようで、私の壱号器は15年ほど全く弾かずに倉庫に入っていた時期があったんですが、久しぶりに取り出しても全く何のメンテもせずに弾きだせるコンディションでした。

 

もちろん、カーボンのケースに湿度計をつけて、水分コントロールをしっかりやるのが本来かもしれませんが、私にとっては木のケースはとても安心できる存在です。

 

さて、、、、

私の壱号器のケースはアルファという少し前に廃業してしまった日本のケース屋さんのものです。もう新しいものを買おうと思っても、わずかに残る滞留在庫が楽器屋さんに残るのみです。

 

アンサンブルなどでバスの移動が増えオブロングのケースが結構傷んできたので、担げるタイプのものを探したのですが、もう見つかりませんでした。

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安心のケース

 

日本に残る銘品が消えてしまうのは本当に残念です。

 

我慢強くオークションで探そうと思っています。

 

 

 

バイオリンの経済学3 名器への道は厳しい

ちょっと間が空きましたが3回目となるバイオリンの経済学。前回はバイオリンの売買の時の経済性の話を少しやりました。

 

前々回の記事:バイオリンの経済学 その1:バイオリンが生まれるとき

https://kamisamacool.hatenablog.com/entry/2020/04/14/080904

 

前回の記事 バイオリンの経済学 その2:バイオリンの経済学 その2 楽器が買われるとき、売られるとき

https://blog.hatena.ne.jp/kamisamacool/kamisamacool.hatenablog.com/edit?entry=26006613491138265

 

この時の目線というか、主語は我々という見方でのステップアップを考えたんですが、今回は全く逆にバイオリンを主語にして考えて見たいと思います。

 

それは今ある楽器が時空を超えて名器の道を歩めるかどうかという話です。

 

この話を考え出したのは、私の初号機をどうしようかという話になった時です。私の初号機は1970年代に父が東ドイツから持って帰った大量生産品の楽器です。近くの工房に見てもらったらおそらく戦前頃の作で、比較的よくできているものの、板厚が5mmくらいありあまりなりそうもないとのこと。また、表板にヒビが入っていてとりあえず貼り合わせられるものの、いつかは本格的な修理が必要とのことでした。

 

楽器って表板にヒビが入ってても大丈夫?って方いらっしゃると思いますが、表板は全く問題ないっていうのが通説のようです。というよりストラドなど見ても表板にヒビのないものはほとんど内容です。むしろ大事なのは裏板で、こっちにヒビがあると結構な修理になるそうな。

 

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一号機のヒビ

 

これらをきちんと直すには一旦バイオリンの表板を開けて裏からパッチを当てる必要がありバスバーにヒビが引っかかっているのでそれも取り替え、かつしっかりと演奏に答えられるように鳴る楽器にするためには表板を削る必要があるというのが最終的な見立てでした。

 

問題はそのお値段で、だいたい一言20万円以上、、、、そーです、楽器一台買えるやんって話になっちゃうんですよね。まじかーと思っていくつかの工房さんのサイトを見てもやっぱり作業内容的にそれくらいかかっちゃうようです。

確かに、職人さんが修理にかける必要な時間を考えればそうなのかもしれません。

 

悩ましいのは、もし初号機は私がこの大改造の投資をしなければ、あえてこの楽器を弾こうって人もいないでしょうし、また楽器屋さんが引き取ってくれるとはとても思えないことです。そりゃそーですよね。表板にヒビがある楽器なんてバイオリン屋さんで見たことないですし。

 

でもそーなると、このバイオリンは1900年初期のものでも、いずれ燃えるゴミと化してしまうしかないんですよね。なんまいだ。

 

実際私はこのバイオリンを弾くことはもうほとんどありません。綺麗な音をだすバイオリンですが、全く鳴らないですし、音を出すには相当力もいるので今の私には実践向きではないです。

 

でも、この楽器を買った父にとっては東ドイツの出張の時に現地の楽器屋で手に入れて、飛行機で持って帰ってきた想い出の品のようで燃えるゴミにするのもちょっと心が痛みます。

 

さて、、、、

 

実は、この修理問題が名器として生き残れるかどうかの、バイオリンのサバイバルの分かれ目なんですね。バイオリンは古くなるとどうしてもヒビが入ったり、ネックが傾いたり大きな数十万円単位の修理が必要となります。でも、我々がお店で見るバイオリンは普通数十万円。ってことはバイオリンの値段が100万円を超えるような見込みがなければ、修理される可能性は低いってことです。(また、修理される前のバイオリンは結構二束三文の値段ってことにもなります。)

 

反対に買う人の視点に立つと100万円を超えるバイオリンって、楽器店に行ってもショーケースにもほとんど入っておらず奥から取り出し来る部類の超高級品ですよね。初心者が買うことはほとんどないでしょう。

 

なので、この修理の費用を乗り越えられる素性があるかどうかがバイオリンにとって大きな運命の分かれ目ということになるみたいです。

 

これって、地方レースで勝ち続けないと生きていけない競走馬によく似ていると思った次第です。有名な製作家の楽器は生まれた時から将来は安泰なのかもしれませんが、まだ駆け出しや無名の作家による楽器、特に大量生産のものは、長い時の流れの中では厳しい運命が待っていますね。

 

 

 

ネットで見つけた20世紀のモーツァルト ヴォルフガング・コルンゴルト

このところコロナで家で音楽を聴く機会が増えています。

 

そんな中で、ある面白い作曲家の音楽との出会いについて。

私としては実際に真面目に聴くのは初めての作曲家でした。

 

名前はウォルフガング・コルンゴルド

 

なぜ、この作曲家の音楽を耳にすることになったかと言うと、現在のヴァイオリンの第一人者のアンネゾフィームターのチャイコンを聴きたくなったからです。

 

前に書いた通り、私はBlue Sky Labelでflac音源のハイレゾで音楽を楽しむ派です。なので普段耳にするバイオリン演奏家ハイフェッツ、コーガン、オイストラフシェリング、ミルシュタインなどのいわゆる昔のヴィルトーゾ。

前時代の超絶技巧文明の方々です。(ファイブスターの騎士みたい)

 

それが最近のコロナの影響で、ライブ配信で色々な日本の若手の演奏に触れているうちに、そういえば今の時代のナンバーワンのバイオリン演奏家誰だっけって話になりました。

 

ムターは、クレーメルパールマンなどと並びまごうことなき現在トップの演奏家

 

そこで、アマゾンでちょうど今後の練習用に聴きたかったチャイコンのCD買ってしまいました。

 

まず驚いたのが超美魔女化したムターのジャケ写真。昔カラヤンとデビューした時にドイツの田舎のオネーサン風のものとは隔絶の感があります。

 

そんでもって、そのチャイコんにカップリングで入っていたのが今回話をしたいウォルフガング・コルンゴルドのバイオリン協奏曲でした。

 

この方、マーラープッチーニなどに10才の頃から天才と絶賛され、ウォルフガングと言う名前から20世紀モーツァルトとウィーンで名声を得た方です。(日本の某都市のモーツァルトとは訳が違います)実際にマーラーが10才の頃の作品を聞いて”わお、天才だー”って言ったなんて話も。

 

その後オペラ作家として名声を得ますが、ナチスに終われ、渡米。ハリウッドで映画音楽を生業とすることに。クラシック譲りの音の厚い映画音楽を作り上げ、アカデミー賞音楽賞を2度受賞、スターウォーズの音楽に直接影響を与えたと言われています。

 

しかし一方、クラシックの世界では、戦後ウィーンに戻るも、ロマン派の古い音楽と聴衆、批評家に受け入れらなかったみたいで、日本でもほとんど名前を聴くことがない音楽家かと思います。

 

さて、、、

 

私が、なぜこの作曲家に興味を持ったかと言うと、それはこの作曲家が映画音楽やポピュラーと言ったの現在のオーケストラ音楽と、ロマン派のちょうど中間点で、橋渡しをした作曲家だと感じたからです。

 

クラシック音楽の歴史の流れは、高校の音楽の授業でも教えられますが、ロマン派のあとに飛躍的断絶があり、いきなりシェーンベルクとかの12音主義の現代音楽になります。

 

私もベートーベンとか古典でクラシックに入ったんですが、その後徐々に年代を下ってロマン派が好きになり結構マーラーとか後期ロマン派が好きな時期がありました。でも、それ以降の時代に自分の志向が下がっていくことはほとんどありませんでした。ぶっちゃけ12音主義の現代音楽があまり好きでなかったからです。

 

年表を見てみると1860年代に生まれたドビッシー、マーラー、Rシュトラウスプッチーニあたりがいわゆる調性音楽の終わりと言われています。

例えばマーラーの9番の交響曲などは調性音楽の限界などと呼ぶ人もいます。(この曲の作曲は1909年です。)

 

同じ時期、1874年に生まれたシェーンベルクが12音の無調音楽を創り出し始めたのが1900年頃で、そこから現代音楽へ突入して行きます。

 

そして現在の到るまで現代音楽がクラシック音楽の主流とされています。

 

しかし、そうやって作り出された現代音楽は、狭いサークルの中でしか聞かれることはなくなりつつあり。戦後は、大衆迎合に成功したり、しいられた社会主義系の作曲家が生き延びている状態と言っても良いかと思います。

 

一方、世の中を見渡すと、レミゼラブル、オペラ座の怪人のような音楽に優れたミュージカルや、スターウォーズハリーポッターのようにレベルの高い映画音楽が多くあります。

 

それらの作曲家は、極めて才能に溢れた人たちで、そうした方の作品に比べると、今の現代クラシック音楽ってどうなったんだと思ってしまったりもする訳です。

 

クラシックの世界でも、むしろロマン派後期の作品方が人気もあると言う状況になっています。

 

でも、後期ロマン派の作曲家の中には、現代音楽の並みに翻弄され、生前ずっと評価に恵まれなかった作曲家もいます。

 

たとえばラフマニノフ

彼のピアノ協奏曲2番は今やクラシックでナンバー1とも言える人気の曲ですが、それはここ数十年の話。1873年生まれとシェーンブルクの2年前に生まれた彼は、現代音楽の勃興の中で評価に苦しめられた音楽家でした。

 

昔、ピアニストの故中村紘子さんが日経の連載で書かれてたんですが、彼女がコンクールで実績を出しヨーロッパで活躍し始めた197、80年代の頃、東ヨーロッパのオーケストラに招聘されてどの曲を弾くかと言う話になって、オケの責任者に彼女の得意なラフマニノフを演奏したいと言ったら。「ラフマニノフですか、もう数十年はやってません。」って言われてショックを受けたそうです。

当時ヨーロッパではラフマニノフは、単に古い音楽家と見なされてしまっていたようで、ロマン派の最後を飾る音楽家としての時代認識がなかったのが原因と述べておられました。

 

では、今はラフマニノフはロマン派の系譜の最後として正しく評価されていると思いますが、そこでロマン派は途切れてしまったのか、、て言うのが、私にとって大きなクェスチョンでした。

 

また、現在のスターウォーズハリーポッターのような音楽はどうやって生まれて来たのかって言うのも不思議でした。

 

そして今回、1897年に生まれたコルングルドはどーもその鍵の一つになりそうって言うのが発見でした。

 

さて、、、、、

 

今回ムターの弾くバイオリン協奏曲の第3楽章を聞いて、”あー”って声が上がりました。そこには、マーラーハリーポッターが10秒ごとに入れ替わる、煌めきの世界がありました。

 

ぴったり(後期ロマン派 + ハリウッド映画音楽)➗2の感じです。本当に驚きました。

 

さらに超絶技巧のザ、クラシックって言う仕上がりです。

 

コルングルドの没した1957年って戦後ですし、私が生まれた年ともそんな離れてもいません。

 

また、彼はシェーンベルクよりも20年以上も後に生まれたにも関わらず、初期のオペラではウィーンやイタリアでも絶賛されています。そうした時代のオーストリアってどんな感じだったんでしょうか?

 

コロナ明けにはオーストリアにも行けそうなのでちょっと楽しみになりました。

 

コルンゴルトのバイオリン協奏曲は彼がアメリカに亡命してから作られた曲で、初演をしたハイフェッツがレパートリーとしていたようです。

 

曲は同じく米国へ亡命していたマーラーの未亡人に献呈されています。さすがアルマさん手が早い。

 

最近は特にアメリカの若手も結構弾くようなので、機会があればぜひ一度スターウォーズハリーポッターの先祖の世界へどうぞ。

 

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クラシックと映画音楽を繋いだ人



バイオリンの経済学 その2 楽器が買われるとき、売られるとき

ちょっと前に、楽器が作られた段階での価格や、お金の話をしましたが、今回は消費者である我々が楽器を手に入れたり、また下取りに出してステップアップして新しい楽器に買い替えたりする時の経済性の話を少し。

 

前回記事:バイオリンの経済学 その1:バイオリンが生まれるとき

https://kamisamacool.hatenablog.com/entry/2020/04/14/080904

 

 

ネットを見ると、バイオリンは値段が確実に上がるから投資として考えられるとする記事もあります。でもこれには結構注意が必要なのではないかと考えています。

 

確かにストラドは年率7%の確実な投資という話もあります。

 

でも、だからと言って自分が買うバイオリンが同じく投資になるとは言えないのではないでしょうか?

 

一つの理由として考えられるのはバイオリンの売価と仕入れ価格の差です。

 

当然ながら我々がバイオリンを買う価格と、買い替えなどで楽器を下取りとして売れる値段には違いがあります。そしてそれが結構大きな差になることが多いです。

  

もし、仕入れ原価(=下取り価格)が40%だとすると、バイオリンの実際の市場価値(再度お客さんに売れる値段)が2.5倍にならないと買った時の値段では下取ってもらえないと言うことになります。仕入れ原価が50%でも2倍。もし25%なら4倍です。

 

この仕入れの原価率が何%かは私自身全くわかりませんが、今回は50%だと数字がわかりにくくなるので、40%として仮に話を進めてみます。

 

楽器が買取りされる価格が40%だとすると、買い替え時の下取りが非常に一般的な自動車の場合だと、だいたい5−7年くらい乗った時の下取り価格と同じくらいになります。

5−7年乗った中古の車って、それなりに故障したりする結構なボロいって感じの車になります。でも自動車の場合は新車を何年か使うと相当痛むのは当たり前で、感覚的に何年か車に乗って40%程度の値段で下取ってもらえれば納得感はあるかと思います。

 

しかしバイオリンは、新作を買わなければ、オールドにせよモダンにせよ、そもそもが中古です。そうした中古で買ったものが数年後外見上は何の変化もなく、値段だけが新車から中古車並みに下がった価格になるとすると、自動車と同じような納得感とはならないでしょう。

 

逆に、下取り価格が40%とすると、バイオリンの値段がバブルの時のマンションみたいに値段が倍以上になって、初めて楽器を売った時の含み益が生まれると言うことになります。

 

しかし自分が保有している間に値段が確実に倍になる楽器は相当限られて当然という話になります。

 

そもそも車だと、誰も新車買って、中古車で売る時に儲けようとしません。それができるのは、一部のスーパーカーだけです。

 

知り合いの歯医者さんのところには、中古フェラーリでの経費による節税の話も来るみたいですし、新車供給が常に不十分で新車の納入に1年以上待たされるため中古車価格が新車価格を上回ることもしばしばです。ある知り合いは、確実に値上がるのでフェラーリ買うのは貯金って言ってました。なので全くありえない話ではないでしょう。

 

フェラーリと同じく、ストラドやガルネリを入手すれば、確実に値段は上がるでしょう。

 

またイタリアの楽器は、今人気ですから欲しいと言う人は多い、つまり需要があるので値段はこれまで上昇傾向にあったことは事実です。実際過去数十年に渡り優秀な作家のイタリアの新作の値段は上がってきました。

 

しかし、それは楽器が優秀であったからと言うよりは、欲しいと思った人間の数が多いから、需要と供給のバランスで値段が上がって来たとも言えます。楽器屋さんなどでも、イタリアの楽器は音だけの値段に見合うかは別問題と聞くことは多いです。

 

そうなると、楽器を投資として考え、これから2倍以上価値上がらないと含み益が出ない状況は、もし短期的な投資であれば高利回り狙いの勇気のいる投資ですし、もし長期的な投資だと我慢のいる投資だと気付かされます。

 

もちろん新作作家のバイオリンの値段は、例えばその方がトリエンナーレなどのコンクールで優勝すれば値段は数倍に跳ね上がります。チェコのシューピドレン、クレモナのヨハンセンの値段もうなぎのぼりです。でも誰がコンクールで優勝するなんか本当に神のみぞ知る世界です。

 

でもそう言う優勝ご祝儀のような値上がりをバイオリンに期待するのは、もはや投資というより投機に近い性格のものと考えるでしょう。

 

さて、、、、、

 

今回は仕入れ価格が40%として話を進めました。

 

とすると、買ったときにお支払いした残りの60%は、楽器店に対しお支払いされるお金になります。再度言いますが、私は楽器商ではないので正確な数字は知りませんが、この仕入れ値はネットでよく物議を醸しています。

 

しかし、私は楽器に払うお金を投資と思わなければ全くいい話で、むしろこれは楽器の使用料と考えレバ良いのかと思っています。

ある楽器店から楽器を買うのは、その楽器店が良い楽器を選んでいるからですし、これから手入れをお願いできる信頼があるだと考えているからです。その信頼で楽しく演奏を楽しめます。そのために必要なお金です。

 

そう考えると、買いたい楽器価格の60%は使用量として払っても良いと思えるバイオリンと出会えた時が、楽器の買い時。

さらに、もし100万円の楽器を買った場合、60万円が使用量で、この楽器を10年使ったら年6万円、月5000円のが月額です。それならまースマホ代よりは安いわけで、もしこのレベルのレンタル料金なら、アマチュアでも他に趣味もなく普段からがっつり弾く人であればリーズナブルと言えるかもしれません。

 

最後に、オークションの話を少しすると、オークションでは売りたい人間が下取りに近い価格でバイオリンを売っているとすると、この60%のコストが下がる余地があると言うことになります。昨今、ヤフオク仕入れている楽器屋さんもちらほら見受けられますので、ある意味オークションでは仕入れ値に近寄ったレベルのお金で売買されてとも考えられるからです。これがネットオークションの魅力でしょう。

 

でももちろん高くふっかけて売っている人もいかねないので、自分で商品の見極めは必要です。当然リスクもあります。試奏は基本難しいですし、写真だけで物の良否を見極める必要があります。

 

なので、目的をしっかりもって、リスクをとる覚悟があって初めて、60%分安くすることが可能と言うことか思います。

 

幸いなことに、私がすでにご報告したネットで入手した優れた弓や、バイオリンはそうやって安く手に入れることができました。

でもそれは、あくまでリスクを趣味として考えられる場合のみ。私は自分のメインのバイオリンをオークションで手に入れようとなんてとても怖くて考えられないです。

 

なので基本的にネットで遊ぶバイオリンと、楽器屋さんとしっかり向き合って選ぶバイオリンは全く別のものかなとも思っています。

 

また似たような売買に個人売買があります。

 

私の知人の高い非常に良いイタリアの楽器を持たれていたご家族が亡くなられたのですが、ご葬儀から間も無くその故人の師匠であった先生が楽器の行方を訪ねて連絡をして来られたことがあるそうです。

 

もしご家族誰も楽器をお弾きにならず楽器屋さんに売ろうとすると、半値以下での引き取りをお願いするしかなかったでしょう。

一方、先生がもし次の引き手の方を仲介されれば、楽器屋さんにお引き取りいただくより高い値段で手放せますし、楽器を仲介で入手されるその先生の生徒さんも、より安く良い楽器が手に入れられたことでしょう。なので双方にメリットのある話になるんだと思います。当然ながらは、先生はその生徒であった故人の方の楽器の素性はよくお分かりです。

その方はご自分で楽器を弾かれるので、亡くなられた家族の愛機を引き継ぎ、その楽器はイタリアの某有名製作家の楽器だったこともあり価格は倍以上になっているそうです。

 

こうやって考え、自分の現在の愛機であるジャックマンを眺めたときに、”そーかお前の実際の価値は4割なんだ”とか、”自分が死んだ後、この楽器は誰かに引き継げるのかな”とか少し複雑な気持ちになりました。

 

私のジャックマンは手に入れて約30年になります。

たまに有名楽器店のネット販売に出ている価格を見ると30年たっても、値段倍には上がっていないなーって感じです。選んでくれた師匠も、このクラスのものの値段は下がることはないけど上がることはないからって常々おっしゃってました。まさにその通りになっている感じ。

 

でも買った楽器屋のご主人は、結構値段上がって来てて、もう同じ値段では買えないとも言ってました。

 

実際の価値ってどのくらいなんだろう。ちょっと確かめて見たい。

 

でも、同じ作者のもので、出来によって価格はバラバラ、楽器の売買って本当に難しい世界ですもんね。正直よくわからない世界ですね。

 

以上売買編のまとめとしては、

新作を除けば、中古としての流通がほとんどバイオリンは、自分が買った値段と、実際に自分が売れる値段には結構な差がある

それゆえ、楽器購入を投資として考えることは、一部の需要が供給を上回っている楽器以外は難しい(中古フェラーリは投資になるかもしれないが普通のベンツの中古車は無理)

なので、極めて高価なものを覗くと、ヴァイオリンは投資とあまり考えない方が良い。買値と下取り値段の差は、演奏する人間からすれば利用料。月々に見合った利用料の楽器を買うのが良いかも。

 

でした。

 

次は、楽器が時空を超えて生き残り、名器の仲間入りできるかを考えたいと思います。

 

バイオリンの経済学3 名器への道は厳しい - 音と風の生活(ネットで楽しむバイオリン)

 

 

 

 

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 中古フェラーリとストラドは意外なところで共通点が、、、

 

 

楽しめるクラシックライブ配信

コロナの中、新しいクラシック音楽の楽しみとして定着し始めているクラシック音楽ライブ配信

 

この分野で先駆者の反田恭平さんがHand in Handという名で、辻井伸行さんと三浦文彰さんなども非常に熱心にやられています。

 

現在のネット環境では、まだたまに音楽が途切れていて、”あーちょっとー”と思ったりすることが1回や2回や数回はありますが、”小さいことは気にしないー”と気分を大きくもってしまえば、日本トップクラスの演奏家さんの演奏を家で楽しめるのは本当に凄いことだと感じます。

 

我が家では、前にも書いた通り、簡易的ながらウォークマンベースの音響システムを作り始めているので、PCと繋いで音をスピーカーから出すとテレビのプアな音に比べると段違いですし、お酒とか飲みながら最高レベルの音楽を楽しめるのは、ちょっとサロン感覚で本当に贅沢な時間となります。

 

また1ライブあたり2000円で家族全員楽しめる価格は、うまく考えられている気がします。家族全員での視聴を考えれば映画館に行くよりはるかに安いレベル。この価格だと相当聴衆が集まらないともうけなさそうなので、まだ演奏家さんが相当努力してやられている状態と思いますが、聴衆が1万とかに近づけばうまくビジネスベースに乗るのではないでしょうか。色々な人に良さがもっと伝わるといいと思います。

 

最近これは凄いと感じた演奏は、反田恭平さんがHand in Handの第三回での、宮田大さんをゲストに迎えてブラームスのトリオと、辻井伸行さんの立川ステージガーデンのオープニングでのショパンの2番のコンチェルト。

 

前者は、バイオリンが反田さんが主宰しているオケのコンマス岡本誠司さんを加えたトリオだったんですが、3人とも演奏が達者でまー驚くほど楽しめました。全編での宮田大さんの唄い具体といい、2楽章の緻密さといい、聞いてて本当に引き込まれました。

ちなみに宮田大さんは言わずと知れたストラドをお使いですが当日はゴフリラだったみたいで、岡本さんのはストラドの後を継ぐとの呼び声No.1のプレッセンダ。凄い組み合わせです。

 

後者は、弦楽5重奏版のコンチェルトだったんですが、バイオリンが三浦文彰さん、

久保賜紀さん、他にもチェロ遠藤真理さん とか伴奏が全員ソリストです。そりゃ当然そのレベルの演奏になります。でもこの方達皆さんプロオケのトップとかも張られてますから、もう完璧以外の何者でもないですね。

 

この2つは、是非円盤化してほしいです。絶対に買います。

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凄い濃いメンツ

 

これからも凄い演奏が目白押しで楽しい夜が過ごせそうです。皆さんも是非一度いかがですか?