音と風の生活(ネットで楽しむバイオリン)

久しぶりにバイオリン始めました。ネットで買ったり、いじったり楽しくやっていきます。

バイオリンの経済学 その1:バイオリンが生まれるとき

今日は、楽器の値段について少しお金の話をしたいと思います。楽器の値段っていくらくらいが本当はいいんだろうって話です。バイオリンを始めるとだんだんステップアップして良い楽器に替えていくと言うこともあり、そうするとだんだんお金をつぎ込むものになっちゃいますね。

 

実際に売られている楽器の値段を見るとストラディバリウスは数-十億円、新作のイタリアでも5百万円するものはザラです。一方で、日本や他の国の新作も数十万円から百万円の世界。バイオリンはやはり高い、道楽の贅沢品です。

 

私のジャックマンもそれなりの値段はしましたし、でも1923年のものがあの値段だったらむしろ安いのではと思ったりもしたりします。新作のイタリアのものに比べると音では引けを取ってるとは全く思えませんが、べらぼうに安いです。

 

なので、楽器が本当に高いのか、安いのか? 捉え方は人それぞれ。もし自由経済の中で売買が成り立っていると考えればと、ストラディバリウスの十億円も、高価なイタリアの新作も、要はその値段で手に入れたいと言う人がいるから価格が形成されているだけかと。

 

世界に数百しか残されていない人類の遺産であるストラドは十億円でも安いかもしれませんし、イタリアの新作もいずれ時を経るとそれと同じような価格になる可能性があるのであればとの目論見で、数百万円の先行投資しようと言う人も多いのでしょう。

 

やはり、この話を面倒臭くするのは、またバイオリンって基本古いほうが音がよくなるので、本来だったらおしなべて古い楽器の方が高いはずですが、実際はそうはなっていないことです。前に書いた18世紀のジャーマンは本当に安くて素晴らしいオールドな音でしたし、最近のイタリアの新作より私も持っている100年前のモダンフレンチなどの方が音がよいなんてことはよくあるようです。百年前のモダンフレンチなんて、プロも使ってたりします。

 

何で昔の音の良い楽器の方が安くなったりするんだろう?

ある楽器屋の方は、”バイオリンの価格と音には何の関係もない”っておっしゃてました。そうなると元も子もありませんね。

 

確かにバイオリンは木の箱に弦張って音がでるだけの極めて簡単な楽器ですし、新作のバイオリンが百万って言う話になると、何でそんなに高いのかって疑問は湧いてきます。

 

そこで、少しバイオリンの値段について、分析して見ようかと思ったわけです。特にビジネスや、経済学的な観点で話を整理してみようと思いました。

 

私は楽器の売買に関しては本当に素人ですし、本当は細かく数字を計算した方が良いとは思うんですが、楽器ってどんな経済学で成り立っているのかを考えたいので、今回は相当アバウトな計算をしていこうと思います。

 

それから基本として、バイオリンを売って生計を立てておられる方への感謝と尊敬は常に忘れることはないので、極端なことを言うのも極力ひかえるつもりでおります。でなくても、バイオリンの値段は、過去に芸大教授の逮捕劇まであったような、センシティブな話であります。あまりおおっぴらに話せるものでないことは重々承知ですが、どうやってバイオリンの経済が回っているのか少し興味が出てきました。

 

さて、、、、

 

まず1回目として、今回はメーカーではない、個人の製作家、または小規模な工房でバイオリンが作られた場合の、製作段階での経済性の話をしてみたいと思います。

 

だいたい、個人の工房の方が年間に作れる弦楽器の数って、色々なブログ見てると普通で10台程度、脂の乗っている多作の時期でも15台程度って複数のネットの記事にあります。なので、もし一人でやられている方だと、その台数x一台あたりの値段がその方の個人事業主としての年間の収入となります。

 

一丁あたりのバイオリンの値段は、日本の製作家の方だとホームページに乗っていて、通常50−100万円、名前が売れている方で150万円です。なので年間の収入は仮に一台100万円として1000万円−1500万円、一台50万円だと500万円から750万円程度になります。

 

楽器一台分のコストは木材だけだと5万円程度位と聞いたことはあり、残りは人件費として製作家ご本人の身入りとなりますが、現実には、楽器店さんを経由して売られたりしていると、中間マージンが発生しますし、その他展示会への出品とか色々販売経費もかかります。 なのでその分を弾いたのが製作家が生計を立てていくための収入になります。

 

そうやって考えると、買い手である我々から見ると一台100万円って言うのは高い値段に見えますが、作り手からすると、台数が作れない中、決して高いものではないということがわかります。

 

そもそも、バイオリンの演奏人口って相当少ないですよね。ネットで調べると10万人程度だそうです。また、その中でさらに数十万円から100万円のバイオリン買う人になるとほんの一握りですから、おつくりになられた10台がそんなに簡単に売れるとは思えません。

 

製作者の方は、若いうちは楽器店で修理仕事したりするのが当たり前のようですし、楽器作りと修理を兼業でやられている方は多いのもこの辺が理由かなと思います。

 

そして次の製作家としの成功へのステップとして、もしトリエンナーレなどのコンペで入賞するなど製作家としての名声を得られれば、価格もいきなり上がりますし、バックオーダーもかかえられ安定したビジネスとしてうまく回り出すという感じでしょうか。

 

イタリアなどでよくやられているように、マイスターが弟子を雇って自分の名前でバイオリンを作り台数をかせいで、一台あたりのコストを下げるというやり方もできりようになり、それはビジネスとして理にかなっているやり方なのかと思います。 

 

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工房での風景

 

1台数十万円から百万円で計算してもこんな感じなので、スズキが5万円であのクォリティーのバイオリンつくっているのは本当に別世界。 大量生産で作られて数万円で売られている楽器と、個人製作や工房製の楽器って、軽自動車とF1のレーシングカーのように別物何だなって思います。

 

と同時に個人の工房で、一人で作り続けていらっしゃる方は本当に大変何だなって感じますし、そういった楽器を弾ける喜びって普段は気がつかないなと反省もします。

 

ここまでのまとめは、

 

”バイオリンの新作の価格(数十万から百万円超)は高いようにも見えるが、年間の製作台数を考えると決して高いと言い切れない。”

 

と言うことになります。

 

次回は、それが市場でどう値段に変わっていくかを話したいと思います。