音と風の生活(ネットで楽しむバイオリン)

久しぶりにバイオリン始めました。ネットで買ったり、いじったり楽しくやっていきます。

オールドの音って?  試奏の旅 第2弾 1700年代のバイオリン弾いてみた

バイオリンの値段が楽器のなかで飛びぬけて高いことの一つの理由として、古い楽器の方が音がよく、かつ大きな音が出せることがあるかと思います。金管楽器とかは金属でできていて丈夫そうなんですが、どんな高級の金管楽器でも寿命は100年ほど。現在、トッププロの愛器となっているストラド、ガルネリでも300歳、アマーティになると400歳近くになります。法隆寺薬師寺の塔は千数百年以上持っていることを考えるとまだ若いうちなのかもしれません。偉大なり自然の力。

 

では、なんで古い楽器の音がよいかというと、それにはいろいろな説がありますが、まず一般的に古くなるとよくなる要因としては、木材の重量が下がり同時に強度が上がることが寄与しており、主に以下の2つの影響が大きいようです。

1.木材の含水率が下がる

木材って伐採したときは30%位が水分だそうで、それから徐々に水分が抜けていくそうです。だいたい12%(日本は15%)に数十年で到達 するそうで、そうなると楽器が軽くなり音が出やすくなるそうです。


2.木材内部のセルロース結晶化し剛性が上がる 

もうひとつ、木材内部の組成が時間をかけて変わる様で、セルロースが結晶化することで剛性が上がっていくようです。木の種類にもよりますが、この結晶化による剛性向上は大体2-300年ほど続くそうで、そこをピークにあとはゆるやかに減少するらしいです。 

この木材の性質を人工的に取り入れようとしたものに、ヤマハのバイオリンのAREという製法があります。私はヤマハのバイオリン弾いたことありませんが、ちょっと興味がわきました。さすが日本は技術の国ですね。

 

https://research.yamaha.com/ja/technologies/are/

 

以上の2つの要素からだいたい楽器が作られてから150年位したころ音質がよくなるというのが、一般的な話らしいです。そのため、新作を創る製作家の方は古い材料の確保が結構大事らしく、近年の新作の名作も結構古い木材で作られたものが多いようです。ただし古材と言っても150年前の古材の調達は本場の製作家でも容易でなさそうですね。

 

またオールドの音が良いことの理由として、時代的な背景があるという説もあります。それは中世の少氷河期の影響を指摘している考え方です。
3.小氷河期のため、年輪の間隔が狭くなり木材の剛性が上がる

1700年ころは、いわゆる小氷河期(14世紀から19世紀半ば)の真っ最中で、ターナーの絵にあるようにロンドンのテムズ川ががっつり凍っていた時代です。こうした時代の木の年輪は夏の部分の成長が遅く、木目の間隔がつまったよい材料となるようです。このようなバイオリン作りに適したよい木はもうヨーロッパには残っていないんだと。

もしこれが要因だとすると、なかなか現在のバイオリン製作にはつらいですね。

 

その他にもストラドなどの音がよい理由については昔からいろいろな研究がなされていて、

4.木材をクレモナに運ぶ間に川の水につけられていて、菌やカビにより木材の不要の部分が食べられ除去された(軽くなった)
5.イタリアではバイオリン製作前に、木材を熱湯煮沸するのだが、それにより不要物除去、セルロースが増える
6.同じく木材をいぶすことがバイオリン作りで行われていて、アンモニアにより木材のセルロース量が増える

ということも言われています。このあたりは無量塔蔵六さんの名著”ヴァイオリン”(岩波新書)とかにも詳しく書かれてますね。

 

7.後世の削りこみ

また他には、ストラドの音がよくなった理由として、ストラドの死後、世に広めた製作家であり楽器商のヴィヨームなどが音をよくするために表材、裏材を再度削り直しして薄くしたなんてこともまことしやかに語られています。

この手法は結構有効なようで、サッコーニのバイブル的名著”ストラディバリウスの秘密”にも修理の際の削り直しの効用なども書かれているらしく、それを受けてか最近の作家は将来の削りこみを考えて少し厚めに作るなんて話もあるようです。

私は、今弾いているバイオリンにしか興味はありませんが、製作家の方はいろいろ考えておられるのですね。

 

逆に、この本の結論では巷間言われていたニスで音が良くなるということについては否定されてます。まあ、確かに今のストラドにできた当初のニスはほとんど残っていないから、なんとなくそうかという気もします。

このサッコーニの本は結構高いらしく、入手むずかしいですが、一度現物読んでみたいですね。

 

さて、、、、、

 オールドのバイオリンってどんな感じだろうと思って、楽器屋さんにふらり。試し弾きをお願いしたところ2台出していただけました。そのうちのひとつが無銘の1700年代とのこと。たぶんオールドジャーマン。

実際弾いてみると、本当に音がやわらかくてビックリしました。言葉にするのがすごく難しいんですが、”ザ オールド”っていう感じの、ガシガシした感じが全くないまろやか音。4つの弦のバランスもよかったです。また、音の大きさもそこそこあり、これは演奏会でもしっかり使えるバイオリンだと思いました。

お値段も私が買ったジャックマンと同じくらいで、年代を考えたら信じられない位安い。

魅力的な楽器ではあったんですが、ひとつだけ気になることがあるとすると、過去の修理がよくなかったのか結構表板がつぎはぎでした。お店の人いわく魂柱が立っているところにひびがはいっており、修理はきちんとされてはいるんだが、それが納得できるかだとのこと。

確かに、魂柱の微妙な調整でバイオリンの音は大きく変わりますし、そもそも魂柱には力もかかっているので性能安定しなさそう。また、もしさらにどこか壊れたら表板外して修理で10万円以上ってことになります。

 

オールドのバイオリンは、いろいろ難しさもあることを学んだ一日となりました。でも、本当音がよいバイオリンでびっくりしました。もう一度弾かせてもらいにに行こうかな。

 

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