カーボン弓って本当にカーボン？
私の知り合いに４０万円の高級弓を練習中に椅子において、そのままお尻で折ってしまった方います。（なんまいだぶー）
絶滅寸前の貴重なフェルナンブーコ材のことを考えると、もはや文化財の破壊ですね。はずキルーペだったらよかったのに？
”象が踏んでも壊れない”カーボン弓にはそんな心配もまったくありません。実際、子供がチャンバラごっこをやっても大丈夫ってかいているサイトも見たことあります。弓でありながら手工品というより工業製品って感じで、気楽に使えることから利用者が増えているカーボン弓はネットでも買いやすい弓とも言えるでしょう。
でも、実はカーボン弓ってすべてがカーボンファイバーで出来ている弓じゃないって知ってました？ 本当にバラバラな製品表記には混乱させられます。
私もカーボン弓買おうとしようとしたときに、どの弓がどういう性能で、どれくらいの値段が適正価格なのか全くわからず、大変苦労しました。どうもバイオリン販売業界では、天然木ではない弓をじゅっぱひとからげでカーボン弓と呼んでしまっているようで、ちょっとおかしい感じがします。
実態は、カーボン弓のメーカーの弓でもローグレード品はカーボンファイバー製ではなく、グラスファイバー製の弓です。
例えば、中国製の有力カーボン弓ブランドであるCarbondixの弓には、同じメーカーによるローグレード品であるBondixっていう弓がありますが、この弓はグラスファイバーです。この事実は、売られている会社さんも明確にカタログにもそう明記されています。
しかし、Ｗｅｂ上の大部分のお店では、この両者をひっくるめてカーボン弓って書かれているケースがほとんどです。実際弓見てもどれがカーボン弓で、どれがグラスファイバー弓なのか全くわかんないですよね。
”カーボン弓はF１の部品みたいに綺麗な模様ついてるからわかるって？ ”
残念でした、カーボンファイバー特有の織物模様はよっぽどの高級品でない限り印刷されたシールが貼ってあるだけなのは、競技用自転車やっている人間では結構知られた事実。ロードレーサーのカーボンのフレームって結構高いんですが、カーボンの織物模様ついている奴なんてほとんどないですし、安いフレームでついていてもほとんど印刷シールです。最近は木目調のカーボン弓だってありまっせ。
さらに、、、
本物のカーボンファイバーが使われているカーボン弓にも、ウェットカーボンとドライカーボンの２種類があります。この二つは全く違う製法で作られています。
という感じでものすごく分かりにくい。値段もカーボン弓は三千円から数十万円、、、、これじゃ手工芸品の木の弓と同じじゃん。
で、、、
とりあえず乱暴にまとめてしまうと、一般にカーボンと呼ばれる弓は素材、製法で３つに分けられます
１．グラスファイバー（安価：厳密にはカーボンではない）
メーカー： グラッサー、Ｂｏｎｉｄｉｘ など
ガラス繊維の入ったプラスチックです。 なので正確にはグラスファイバー弓か、プラスチック弓と呼ぶべき。
２．ウェットカーボン（比較的安価だが、高いものもある）
メーカー： Ｃｏｄａｂｏｗ、Ｙａｍａha、グラッサー（一部）、中国ブランド他
カーボンファイバーをポリエステル樹脂で固めたシートを、接着して自然乾燥したもの。釣り竿に似た作り方。
カーボン１００％でない場合もあり、グラスファイバーも一緒に接着して柔らかさを出したりしているようです。
３．ドライカーボン（高価）
多分オーストリアのＡｒｃｕｓ１社のみ
カーボンファイバーをエポキシ樹脂で固めたシートを、接着して炉で焼いたもの。オートクレーブ処理といいますが、その結果非常に優れた軽量化となり、Ｆ１のボディーとかで使われるています。でも手間がかかるだけお高いのが難点。また、 高温の炉で焼く関係でカーボン以外は溶けてなくなりますので１００％カーボンファイバーになります。
値段は １、２、３と高くなるのですが、必ずしも値段に比例して性能が上がるって訳でないのが楽器の面白いところ。もちろんArcusの最上級弓なんて５０万円しますから、悪いわけはないですが。
さて、、、、
管理人は、ある工房プロデュースの中国製カーボンファイバー弓と、グラスファイバー弓のトップメーカーであるグレッサーのグラスファイバー弓を持っていますが、この２つは全く違う性格の弓です。
次回から、実際の弾いた時の感じの違いを、まずグラスファイバーから、説明して行きましょう。
