音と風の生活(ネットで楽しむバイオリン)

久しぶりにバイオリン始めました。ネットで買ったり、いじったり楽しくやっていきます。

楽しめるクラシック音楽映画2   「蜜蜂と雷鳴」が教えてくれたもの

管理人は結構クラシック音楽映画にもはまっているのは、前の書き込みで書いた通りです。

 

コロナの自粛期間にいろいろ見過ごしていたクラシック音楽映画を見ましたが、面白かった映画の一つとしてあげたいのが蜜蜂と雷鳴。直木賞受賞作の映像化です。

 

この作品は、浜名湖コンクールを模したピアノコンクールの表裏を、しっかり丁寧に描いていく映画で、四人の主人公や周りの登場人物も丁寧にと描かれ、かつ役者さんが大変上手く演じられていて、全く飽きずに最後まで興味をもって見ることができました。音楽の天才が天才であるゆえんは何かという重要な命題や音楽家の苦悩の部分にも上手くスポットを当てていますが、基本的にはコンクールを淡々と見せて行く面白い映画だったと思います。

 

映画の評価が高かったことは、日本アカデミー賞の優秀賞にも結構名前が出ていたのである意味証明されている通りで、疑問の余地はありません。また後で述べますが、この映画で新しいクラシック音楽の聴き方も見つけました。

 

でも、個人の感想として、よい映画だなーと思いつつ、すこし違和感を感じた部分があったことも事実です。

 

それが何なのかーと考えたんですが、この映画、若い音楽家の心の内の葛藤を美しい音楽とともに描いたクラシック音楽のような映画だったからかなとも思ったりしています。

 

この映画の音楽や映像美はファンタジーのように素晴らしいです。でもその美しさの故に、対象オーディエンスがクラシック音楽が既に好きな人になってしまっているように思えました。

 

似たような印象を過去抱いた映画に「マエストロ!」があります。(偶然にもこの映画で重要な役を演じられている松坂桃李さんが主演で出られております。)マエストロ!はクラシックを音楽を正面からとらえたとてもよい映画です。演奏者が音楽に向き合う姿やその社会的背景などが丁寧に映画に描きこまれていて、楽器を演奏するものとして共感できる部分が多くあります。

 

でもマエストロ!を見て私が得た共感は、日本のクラシック的というか、箱庭的だなーと感じたことを覚えてます。それと同じ感想を今回も抱きました。

 

それに比べるとヨーロッパのクラシック音楽映画は、この前紹介したフランス映画のオーケストラ!もそうですが、ハチャメチャなストーリーながらすごく熱を感じさせルものが多いです。

 

私は出張などで海外に行く機会もあるのですが、その時は無理をしてもオペラやオーケストラを聴きに行っています。そこで聞く音楽は、正直演奏レベルが低かったりするものもあるのですが、演奏している人間のエネルギーを感じ、日本とは結構違うなーって思うことが多いです。特に、パリでオペラ座などでのオペラやバレーでは、クラシックというよりむしろニューヨークのミュージカルを見ている様な気分になることすらあります。

 

また昔ボリショイでジゼルを見た時も、観客が熱狂的で、すごく宝塚っぽい。観客自体も若年層も多く、またセレブもドレスアップして多く訪れ、すごく楽しめるイベントになっていましたし、勢いが本当にすごい。

 

そうした演奏会などで感じれられる熱とか勢いが、現在のヨーロッパのクラシック音楽映画にもあるような気がします。もしかすると、現在のヨーロッパのクラシック音楽の根底にあるのかもしれません。

 

それに比べると、日本のコンサートでは、名演奏の後に大きなブラボーの声が上がることはありますが、良く言うと上品な演奏、悪く言うと静かな演奏会が多いように思えます。結果、演奏そのものの記憶は残るものの、演奏会自体の記憶はどうかというと、どちらかというとすぐに忘れてしまいがちな気がします。

 

「蜜蜂と雷鳴」見た後、日本のクラシック音楽映画も、きれいな音楽や美しい映像を、文学的なストーリーを紡いで行く感じが好まれているのかなー。

 

こうした味付けの映画は、おそらく日本のクラシック好きな中高年には受け入れられやすい路線なのかも。

 

それで、綺麗とか美しいというファンタジーのような雰囲気の映画になっていってしまうのかもしれませんね。

 

さて、、、

 

この映画を見終わった後、私自身に本人にとっては意外と言ってもいいほどの大きな変化が起きました。

 

それはこの作品で中心をなす楽曲となっているプロコフィエフバルトークのピアノ協奏曲にはまり始めていることです。

 

プロコフィエフ自体は、パリのオペラ座で見たりしてたくらいなのでそれほど拒否感はまったくないのですが、正直ピアノコンチェルトを聴いたりは全くしていませんでした。

またピアノ協奏曲はどちらかというと好きなジャンルだったんですが、ラフマニノフの2番とモーツァルトの21番などウィーン後期に好みが限定されていました。

それが、この映画を見て以来、結構な頻度でプロコフィエフの2,3番を聴いています。

 

バルトークにいたっては、その昔NYフィルの管弦楽のための協奏曲を聴いた時の違和感から少しトラウマになっていて、ちょっと拒否感が正直ありました。

でも、ピアノコンチェルト3番は、バルトークの違和感であった打楽器感も少な目で聞きやすいことに気が付きました。冒頭の音楽のスケールの大きさというか空気の抜け感は結構気持ちいですし、最終章の盛り上がりも癖になりまそうです。

 

なので、この映画が、新しいジャンルの音楽を教えてくれたと思っています。とかくマンネリになりがちなクラシック音楽生活において、助かります。

 

さらに、この映画の原作がどうしても気になってしまい、外伝短編集も含めてKindleで一気読みしました。

 

原作は、映画とは同じ結末ながら、結構違うストーリーになっていて楽しめました。特にコンクールを細かな書き込みでしっかり描いていくという部分には、映画よりさらにのめり込んでいける深さがありました。

 

映画をもし見られた方は原作も読まれるとよいのではないかと思います。

 

映画が先か、原作が先か?相当昔のキャッチコピーですね。(知っている人は皆ジジイかババアでしょう。)

 

そんなこんなで「蜜蜂と雷鳴」いろいろ学びのあるよい映画でした。もしまだご覧になっていないのであれば、マエストロ! も合わせて是非ご覧あれ。

 

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登場人物の描写がよかった映画でした