音と風の生活(ネットで楽しむバイオリン)

久しぶりにバイオリン始めました。ネットで買ったり、いじったり楽しくやっていきます。

ネット経由の弓を巡る旅 フランク・ヴァンサン Franc Vincent A Lyon by Daber

(前書き込みから続く)

 

家に帰って、あわてて松脂塗って試し弾きです。こんな時に限ってなかなか上手く松脂のらなくて、気がせきます。古くなって固くなっちゃってるからか。あたらしいの買わないとダメそう。

 

塗りながら、改めて気が付いたのが、変な弓の形です。同じフレンチの新作なのにミランと全然形が違います。

ミランは細く固めの軸が、本当に弧って漢字の様の綺麗なカーブを描いた美しい弓。

それに比べて、このフランクヴァンサンの弓は、まず軸がミランより一まわり太く、結構まっすぐなデブッチョ弓。また先の方になると急に直径が細くなるちょっと変な形で”ツチノコ”みたい。

これって、もしかすると贋物、、、ちょっと不安がよぎります。

 

なんて考え打ち消すべく慌てて松脂をごしごしして、やっと準備完了です。

 

実際に弾いた感じは、これがまたミランとは全然違います。

まず音がすごく柔らかい感じでビックリ。慌ててミランと交換して何回も引き比べます。弓の腰も少しソフトな感じで、音量もちょっとだけ控えめ。でも間違いなく柔らかい音です。

そして驚いたのは、その音の響きが”弓がバイオリン本体と共鳴して鳴っている”感じがすること。ミランが少し硬く金属的な”キーン”っていう緊張感のある音がするのに対して、このダベールは、木そのものが鳴ることで音を出している感じ。よく工房のかたのネットでの書き込みを見ると、弓で音が変わるって話がありますが、まさにそれを実感です。

 

また、操作性は、腰が柔らかい分、弓が飛ばすところは注意が要りますが、でもとても素直で安定した感じ。でも、長い音符は本当にきれいに響きます。なのでアンサンブルにはむしろこっちの方が向いています。

 

これは、もしかしたら、お得なお買い物だったのかも。頬を少し緩みました。満足度も一気に急上昇。

 

でも、何か気になるのは、”もともとの定価そのものが安すぎやしないか?”ということ、 

それから、”この音ってどっかで聞いたことがある気がする。どこだっけ?”

 

数日後、、、、

このフランクヴァンサンの音と響きの良さに狐がつままれていた管理人は、はっと思い出しました。この音と似た音が何であったか。

それは、その昔演奏会に助けに来てくれた、プロオケの方が弾かれている楽器の音だったんです。特に、練習前に肩慣らしに弾かれていた時の、音にそっくりだったんです。人によるのかもしれませんが、プロの方の肩ならしの音って、けっして大きな音でバンバン弾くわけではないんですが、すーっと弾いた時の音がきれいで記憶によく残るんです。

”すげー。プロと似た音が出せるようになったのか。”とさらに満足度アップ。

 

また数日後、、、

どうしても、弓のもともとの定価に対してコスパが良すぎることに納得いかない管理人は、あっちこっちの工房のフランクヴァンサンの値段を調べました。

 

そして見つけてしまったんです。フランクヴァンサンには2つの弓があることを。

それは普通の弓と、☆印がついた弓でした。(最初は、同じ弓に2個の値段があって誤植だろうってくらいにしか思いませんでした。)

すべての弓の作者や工房というわけではないんですが、同じ弓でも出来が良いものが仕上がった時には、特別な意味をこめて☆の刻印を、弓の銘の横に押す習慣があるようです。

 

慌てて、弓の銘の刻印をガン見する管理人。

あ、、この名前の後ろのポチって、、、、もしかしてこれが☆印、、、、、、え、本当?!

下の写真をご覧ください。

 

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ポチっがついてた!

なんかすり減っているけど、これって☆か? 

 

ちなみに、定価のお値段はこのポチッじゃなくて、☆だけで約3割近く違います。

 

道理ででいい弓だったんだ。妙な納得感と、さらなる満足感。

 

以上が、今回のネット経由の弓を巡る旅のすべての顛末です。めでたしめでたし。

 

 

幸いにして今回はしっかりした性能のでる弓を、信じられない位の値段で手に入れることが出来ました。アンサンブルの練習でも普通に使えています。

もちろん、すべてが良いわけではないです。この弓の出す音は綺麗で、スムースに弾けるので、結構ごまかしがききやすい感じ。でも少し控えめな音質なので、ちょっと気を許して手を抜いて弾くと、コンミスに”今ひいてました?”って注意されることも。

でも、この弓のそうした調和して隠れてしまいそうな音と、ミランのような前面にでしゃばる音、どちらも弓の個性で、使い方を選べばよいんだと思ってます。

次回の演奏会は、バッハ、モーツァルトチャイコフスキーバロック古典の2曲は、響き重視のこの弓で、音が跳ねまくるチャイコフスキーミランで行こうかな。演奏会の楽しみが少し増えます。包丁一本の時には、考えられなかった贅沢な悩みです。

 

フランク・ヴァンサンは、弓の名工であるジャン・シュミットがリヨンに1981年に開いたダベール工房のもので、工房は今も後継に引き継がれています。

 

ネットでもいくつかの書き込みがありますが、共通するのは”音質がよい”ことを褒める声。やはりしっかりとした個性を持ったよい弓ですね。

http://yuhinomado.jugem.jp/?eid=864

https://seivoci.hatenablog.jp/entry/20141202/1417527190

 

この弓がどんな経緯を経て私の手元に来てくれたのか知る由もありませんが、これも出会い。大事にしていこうと思います。

 

なので、もし万が一仮にこの弓が贋作であっても、出会えて大満足です。まあ、この価格の弓に、これだけの性能の持つ贋作を敢えて作る人がいるとも思えませんが。

 

また、オークションでなければ、価格的にこの弓には二本目としては手がでず、管理人は一生手にすることはなかったでしょう。その意味でネットならではの体験でした。

 

今回2本目の弓を手にしたことで、確実に演奏の幅が広がった感じがしました。バイオリンIQやEQも上がったかもと思っております。

 

あとは練習だけですね。はい。